あぁ、おもしろくないのう。
の奴は未だに丸井が好きで
俺の前では泣きもしない。
いっそ傷ついて傷付きまくってボロボロになって
俺でいっぱいになればいいのに
あいつの心に俺の入る隙なんてない。
あいつは決して表に出さない。
なんてつまらない。
≪花をいじめる空の色≫
「あいつらは今日もお暑いのう」
屋上にで丸井を待つ丸井の彼女に声をかける。
先週まで校庭からと丸井のいる教室を見てたくせに
どうしてか屋上でのんびりと待つようになったそいつ。
今も教室でラブラブだなと言えば、友達だからなんて作り笑いをする。
あぁおもしろくない。
いっそから丸井を取り上げてくれよ。
の絵が好きだとか言って
が絵を描くために借りてるそのスペースに居座る丸井を
彼女の権限で独占してくれ。
そしたらまたは悲しんで、少しだけでも隙ができる。
「嫉妬せんのか」
「しても無駄なんだもん」
色んな女を振り回して、丸井は勝手な奴だ。
まぁ、俺も人のこと言えんが。
こいつが校庭で待っていた頃に同じように声をかけたことがある。
その時は嫉妬して、独占したいというのが表情に出ていたのに
女というのはこうも変わるもんか。
「もう丸井が来る時間だよ」
「あぁそうじゃな、退散するぜよ」
背中を向けて手を振るとまた明日と声がする。
階段を降りる途中ですれ違った丸井をシカトして
そのままのいる教室に向かう。
扉に手をかけて開くと、驚いたように俺を見る。
いっそ睨んでくれればいいのに。
「仲が良いのう」
「あっちが来るんだからしょうがないでしょ」
「でも、喜んでるんじゃろ」
一瞬悔しそうな顔をして
それでも俺を見ずに筆を進める。
あれから大分進んだその絵。
爽やかな青の広がるその絵。
「丸井のことでも考えて書いとるんだと思っとった」
「絵が暗くないから違うって?」
そう言う俺に、ふっと笑って。
まさか笑われると思ってなかった俺は驚いて。
「何で驚いてんのよ」
ぶっきらぼうな口調でそう言う。
お前も、変わるんか。
もうこんくらいじゃ傷つかんのか。
「丸井のことはさ、もう諦めたんだよ」
「ほう」
「だから、あんたが望むように傷ついたりなんてしないの」
べえと舌を見せて笑う。
は、強い。
前から、強くて美しい。
悲しい時でも表に出さずに
何度いじめても、泣き顔なんて見せなくて
何度けなしても、強さを俺に見せつける。
嫌いだと言い放ってやったらおあいこさまと言われたこともある。
それでも俺を邪険にしない。
本気で嫌ったりなんてしない。
丸井はこいつを見なかったけど
俺はこいつから目を離せない。
傷ついても辛くても笑おうとするこいつは
それこそ崖の上に咲く花のようで
他の草木も咲かないような切り立った崖の上で、天候が荒れようと強い風が吹こうと
それでも笑い続けようとするから、手に入れたくなる。
「丸井はお前の絵が好きなんじゃと」
「知ってるよ。嬉しい限りだね」
じゃあ、もしも俺がお前自身を好きだと言ったらどうする。
頭に浮かぶのにその言葉は出てこなくて
俺はお前の絵が嫌いだと口から出てくる。
天邪鬼なんてまさしく俺に合う言葉だななんて心で自嘲する俺に
いつか好きだと言わせて見せると不敵にお前は笑うから。
「変な奴じゃ」
「あんたに言われたくないわ」
いつか俺のためだけにその笑顔を見せてほしいから
きっと空は花をいじめるんじゃな。

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